大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「はい。
もう、十分いただきました。
見てください?
お椀、1杯、全部食べましたよ?」

私がお椀を見せると、

「よかった…
このまま、アヤが黄泉の国へ旅立ってしまうの
では…と気が気ではなかったが、やはり里で
食べる料理はうまいか?」

大王は、私を抱き寄せて言った。

「はい、格別です。」

私が言うと、

「では、今宵はここに泊まって、
夕餉も食べていこう。」

と大王は言った。

「っ
いいのですか?」

「ああ。
俺にとって、アヤ以上に大切なものはない。
アヤが元通り、元気になってくれるのなら、
なんでもする。」

「ありがとうございます。」

私は大王の温かい腕の中でお礼を言った。
< 60 / 147 >

この作品をシェア

pagetop