大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
午後、私は久しぶりに機織りをして過ごした。

隣で大王が珍しそうに眺めている。

門外不出の機織り、一族以外に見せるのは初めてだ。

大王、曰く、
「俺が機織りを見たところで、できるように
なるわけでもないし、できたところで、
やるつもりもない。
だから、俺が機織りを見るのは、
犬が機織りを見るのと同じだ。」

ふふっ
確かにそうかもしれない…

だから、大王は、私が機を織る所を楽しそうに見ている。

でも、見ているだけで、楽しいの?

「大王、退屈ではありませんか?
馬で遠駆けなど行かれてもいいのですよ?」

私が言うと、

「アヤが楽しそうな所を見ているのは、
俺も楽しい。
普段は、こんなにアヤと一緒には
いられないし。」

と大王は笑みを零す。
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