大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
私は、久しぶりの機織りが楽しくて、黄昏時まで織り続けた。

そして、その後、母と共に、夕餉を作る。

芋や菜を刻み、煮込んでいく。

肉はないが、兄が近くの川で鮎を釣ってきてくれたので、焼いてほぐした身を入れる。

香ばしい香りが辺りに立ち込めた。


私は、また、お椀1杯食べる事ができた。

大王もいつもの贅沢な食事ではないけれど、文句ひとつ言う事なく、おいしそうに食べてくれた。

「大王、お口に合いましたか?」

私が聞くと、

「ああ。アヤの作った料理はうまかったぞ。
あんなうまい料理ができる妃は、
アヤだけだ。」

と言って笑った。

「それは嬉しいです。
今度、香久山でも作らせていただいても
いいですか?」

「くくっ
アヤが何でもやってしまうと、女官たちの
仕事がなくなってしまうぞ?」
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