大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「俺は大王だぞ。
この国で最も強い力を持つ男が、
自分の妃ひとり自分で決められないのは、
おかしいではないか。
俺は、アヤを正妃とする。
アヤはこの先も、こうして俺の隣に
いてくれればそれでいい。」

大王はそう言って、私の腰を抱く手に力を込める。

私は大王を見上げる。

不安の色は目にも表れているだろう。

大王は、私の頬にそっと手を添える。

そしてそのまま、そっと口づける。

私はそれを抗う事もせず、受け入れる。

心臓は相変わらず、トクトクと忙しなく鳴っているが、それすらも心地いい。

私は大王の背に手を回し、そこにある衣をきゅっと掴んだ。



私たちは部屋に戻った。

私は大王の腕に包まれて、安心する。

大王は、再び、私に口づける。

何度も口づけた後、今度は耳に口づける。

「あ…」

私はくすぐったくて、思わず、首を竦める。

すると今度は、首筋に口づける。

「ん…」

何度も口づけられると、だんだん、体が火照り熱くなるのを感じた。

大王の口づけが胸元へ下がってきたところで、私は大王を止めた。
< 74 / 147 >

この作品をシェア

pagetop