大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
大王は続ける。

「アヤには後ろ盾になる豪族がいない。
だがそれは、言ってみれば、誰でも後ろ盾に
なれるんだ。
だから、アヤは安心していい。」

大王は私の手を握った。

大王は側の女官に何か囁いた。

女官は立ち上がってどこかへ行く。

しばらくすると庭園の雑踏の中から、懐かしい顔が現れた。

「お母さん! 兄さん!
どうして!?」

私は驚いて、思わず立ち上がって駆け寄る。

「大王が遣いをくださったんだ。
今日はアヤにとって大切な日だからって。」

兄さんが言う。

「アヤ、すっかり元気になったのね。
良かった。」

母の安堵した表情から、里帰りの時にはどれ程心配させたのだろう…と心苦しくなる。

「遠い所をわざわざ来てくれてありがとう。
私は大丈夫だから。
大王がいてくださるから。
だから、安心してね。」

私は母の手を握った。
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