大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
母たちが下がると、私は大王にお礼を言う。

「大王、お心遣いありがとうございます。
母と兄に会えて、嬉しかったです。
なのに、私はいつも大王にしてもらう
ばかりで、何もできないのが心苦しいです。」

「アヤはここにいてくれるではないか。
アヤがいてくれる事が、俺にとって
何ものにも代え難い幸せなのだから、
それだけでいいんだ。」

大王は私の頬を優しく撫でる。

私はそれだけで頬が火照り、心臓が忙しなくなる。


月が頂点に達すると、宴も終盤になる。

未だご機嫌で呑んでいる者もいるが、人もまばらになってきた。

そこで、私も大王と部屋に下がる事にした。


部屋で夜着に着替えると、大王も現れた。

「アヤ…」

現れるなり、大王は私を抱きしめて口づける。

「ん… ふ…
大王、酔ってらっしゃるんですか?」

いきなり深くなる口づけに私はどうしていいか分からなくなる。
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