大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
思いもかけず、妹たちの近況も聞けて、胸がいっぱいになった。

私がいなくなって迷惑をかけたと思っていたが、妹が献上品を織れる程、機織りが上達していた事が嬉しかった。

きっと涙ぐましい努力をしてくれたんだろう。

「大王が今着ていらっしゃるのも、私が
着ているのも、桑の里の絹を私が仕立てた物
なんですよ。
私は、こちらへ参りましてから、時間が
ある時には、桑の里の絹を仕立てて過ごして
おります。
里の皆様にもよろしくお伝えください。」

「はい。
もったいなくもありがたいお言葉、必ず里の
者に伝えます。」

兄は床に付きそうなほど頭を下げた。

ハヤにも声を掛けたい…

でも、大勢の人がいる前でハヤに掛ける言葉が見つからない。

結局、何も言えないまま、桑の里の使者は下がっていった。








ハヤはなぜ、ここに来たの?

大王と並んで座る私を見て、何を思った?

ハヤは、もう他に思う人がいる?

それとも、まだ私を思ってくれているの?

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