大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
大王に馬に乗せていただくのは、とても楽しい。

大王の腕にすっぽりと包まれて、高い所から景色を眺められて、とても心地いい。

だから、決して近くはないのに、あっという間に、桑の里についてしまった。


大王は、新しくなった私の家の前で私を降ろしてくれる。

家の前では、私の家族とハヤが出迎えてくれた。

大王は、そっと私を抱き寄せる。

「アヤ、お前を信じてる…」

大王は私の耳元で囁く。

「はい。
大王の信頼を裏切るような事は、
絶対にしません。」

私が言うと、大王は目を細めて私の髪を撫で、その手をそのままうなじに添えると、優しく口づけた。

「では、行ってくる。」

大王はそう言って、ひらりと馬に跨った。
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