THE FOOL
そうして、その接近すら気が付いていないように本を読みふける姿におもむろに手を伸ばすと、彼の視界を濁らせているであろうサングラスを躊躇いもなく奪った。
瞬間、さすがに反応し上げた顔。
そうして初めてまともの捉える顔と特徴に驚愕する。
そうまるで・・・・、
「・・・・似てるでしょ?」
そう私の言葉を代弁したのは茜さん。
取り上げたサングラスを唇に当て、はっきり明確になった彼の顎を掴むと私にそれを示すように顔を向けた。
そうまるで・・・・似ているのだ。
茜さんに。
そして一番に惹かれる、そのグリーンアイでさえも。
ドッペルゲンガー?とまではいかなくても類似する姿に、口を馬鹿みたいに開いて固まれば。
その反応に満足だと酷く楽しげに笑う茜さんと、茜さんの手からサングラスを取り返そうと躍起になる彼。
ここまで類似していれば馬鹿でも分かる。
「えと・・・親類ですか?」
それでも躊躇いがちにそれを問えば、にっこりとそれを肯定したのは私の婚約者である方の彼。
「こいつはね、雛華(ひなか)。俺と同い年だけど親父の弟なんだよ」
さらりと説明された事を解読しようと眉根を寄せて空を見つめる。
そうして理解すれば単純なその人の立ち位置。
「つまり・・・・叔父さん・・ですか?」
「そ、でも俺も感覚おかしくて時々いとこと勘違いしちゃってる」
ケラケラと笑う茜さんをよそに、サングラスを必死に取り返そうとしている姿を見つめてしまう。
そうして見つめていれば不意に絡んだ視線。
瞬間その眼を背けられ、その顔を隠すように背中を向けられた。
ええっ、
何その反応!?
あっ、もしかしてさっきのアレで嫌われた!?
露骨な態度に軽い衝撃を覚えつつ、オロオロとしていればすかさず補足を口にする茜さん。
「あ、雛華は極端に人見知りだから。こうして外に出ていること事体稀でその姿を目にするのは奇跡に近いかも」
「はぁ・・・ひきこもり・・ですか」
「そ、で、このグリーンアイを見られる事を酷く苦手としているからさ」
そう言って自分のそれを示す茜さんが悪戯っ子っぽく雛華さんなる人を突いている。