THE FOOL
それでもよく分からなくて、目を瞬かせ眉尻を下げながら雛華さんを見上げれば。
私の本気の懸念をまたもや吹き飛ばすような嬉々とした声。
「ははっ、やぁっと芹ちゃんが見てくれたぁ」
「は?」
「芹ちゃんってば全然俺の事見てくれないんだもん」
「な・・・なに・・・」
「それに・・・まだ終わって無かったからさぁ。肌の柔らかさの探求心」
あ・・・
探求心って・・・・それ?
めちゃくちゃ可愛らしい満面の笑みで見降ろされ、私の懸念していたそれでないと判明しました。
よって再びの・・・・自意識過剰による脱力。
同時に羞恥心で熱くなる顔を両手で覆っての現実逃避。
「うー・・・・」
「ん?芹ちゃん?芹ちゃーん??」
どうしたの?とばかりに声を響かせ、私の手首を掴んでくる雛華さんに必死の抵抗。
見られたくないと顔を覆う手を死守するのに、子供の様に向きになり挑んで取り外そうとしてくる彼。
結果・・・・、
男の力には敵いません。
力負けして晒された顔に空気が冷たい。
そう感じるほどに顔が熱を持ち赤いのだと思う。
今にも泣きだしそうに怯んでいる表情を見て、クスリと笑った雛華さんが私の赤く熱をもった頬に唇を這わすとカプリと軽く甘噛みをした。
ピクリと反応し、目を一瞬閉じてそれを逃しゆっくり開く。
同時に離れた雛華さんの唇がこれまた甘ったるい言葉で私を苛める。
「俺やっぱ、芹ちゃんのほっぺの感触が一番好き」
「な、なにそ・・れ・・・・」
最後の『れ』を言った時にはすでに唇が再び頬に触れていた。
食んで這わせてまた甘噛みして。
まるで猫がじゃれているような仕草は絶妙な甘さで私を熱くする。
下手したらセックスなんかの方が無我夢中の内にその熱を忘れるからマシなんじゃないかと言うほど。
トロットロに絡みつく甘さがなかなかその余韻も熱も引かせないから困ってしまう。
雛華さんのこれに、そう言った扇情的な意味はないというのに。
「芹ちゃんの体・・・気持ち良くて・・・好き・・・」
じゃれついていた唇が熱い息と一緒に吐き出した言葉が羅列ばかりは扇情的だ。
でも、そんな意味で使っていないのが雛華さんなんだ。
全て・・・探求心。