THE FOOL
あっ・・・・綺麗。
次に浮かんだのも純粋な称賛の感想。
そして、やはり茜さんの色身とは僅かに異なると感じるグリーンとしっかり視線が絡んで不動になる。
私の言葉が引き金の様に、固く閉じていた目蓋をはっきりと開けた雛華さんはやはり美麗と称賛しよう。
長い無造作に下りている黒い前髪の隙間から覗くグリーンが驚きを孕んで揺れる。
その驚きはどこにかかるのかとこちらも疑問を抱いて見つめていれば、ようやく動き出した彼の唇。
「・・・・・清掃員の子だ」
ポツリ今更指摘してきた言葉に目を丸くせざるを得ない。
だって、えっ?今頃?!
と、思ってしまうくらいこの空間に一緒にいたというのに。
そんな会話から大体の事を理解したらしい茜さんがクスクスと笑うと私に「ごめんね」と呟いた。
「雛華はね、基本2パターンで構成されてるから」
「こ、構成?」
「そ、本を読んでいる時は色々な知識をダウンロードしてると思って。だからそれ以外の事は見えてないし聞こえてない。何があっても反応しない」
それは・・・・経験済みです。
そう会議室の彼がそうであったと印象深く新たに記憶に刻まれていて、この記憶はちょっとやそっとじゃ消えないだろうとも思ってしまう。
なら、もう一つは?
その疑問まで考えが達する間も見事読みとる茜さんは凄いと思う。
丁度疑問を頭に浮かべたタイミングに待ってました。と言わんばかりに二本目の指を立てた彼。
「次が雛華の恐ろしい部分」
「お、恐ろしい?」
「いや、ある意味尊敬にも値するかな」
そう言ってニヤリと笑った茜さんが、雛華さんにようやくサングラスを手渡し解放した。
「知識を得た事への探求心。それを得るためのこいつの行動力は半端ないよ。それこそそれを動かすために普段は充電している様に、動き出した時のこいつは止めるのに苦労する」
探求心?
あまりピンとこないそれに表情にもそれを出していたらしい。
茜さんが困ったように微笑んで、何か言いたとえは無いものかと何もない空間をじっと見つめた。