THE FOOL
「はいはい、無事紹介も済んだし~。芹ちゃん、今日もう上がりでしょ?」
「あ、はい・・・」
「じゃあ、俺ももう少しだから待ってて~。またごはんしよ」
にこやかに当然のように来た誘いの言葉。
当然その含みは理解して、それでも逃がさないと追い打ちをかけるように私の耳元に寄った唇。
「また・・・・抱かせて」
ゾクリとする言葉。
クラリと目が回って、燃えるんじゃないかって程顔が熱くなる。
狡い狡い狡い。
何が狡いって、その言葉に私の拒否権なんて存在しないんだ。
勿論拒否する様な理由もない。
それでも取ってつけたように非難の眼差しで見上げると、それを上回り押さえこむ様な妖艶な笑顔。
負けた・・・・。
「芹ちゃんが大好きだよ・・・・・」
心で告げた負けの宣言まで聞こえているのか。と、もう超人である婚約者に白旗の笑みを返せば、ガラリと可愛らしい笑みに姿を変え私の頬に口付けた。
甘い・・・、もう本当にこの時間が絶頂だと思ってしまう。
そんな空気に酔いしれそうだった頭に冷や水をかけられる。
グリーンの威圧。
茜さんの後ろに立つその姿が、今でもずれる事なく私を射抜く様に見つめていた。