THE FOOL






いい加減にしろと睨み上げ、そのグリーンをまっすぐに射抜く様に見つめる。


悔しいけれど・・・。


綺麗すぎる。





「ねぇ、・・・君を誘拐した理由分かる?」





その言葉に散々さっきから聞かされていたというのに僅かな動揺。


そう、どんな理由があろうとこれは誘拐なのだ。


そして今その【誘拐】という項目に探求心が働いているらしい彼がそう簡単にそれを中断するとも思えない。


だって茜さんも言っていた。


満足するまで納得するまで動くそれは手に負えないのだと。


思わずごくりと唾を飲む。


そうした反応で自分が優位に戻ったと理解したのか彼が頬笑み、その妖艶な顔をゆっくり近づけるとその言葉を告げた。





「・・・・・・俺を誘拐して」


「・・・・・はい?」




さすがに・・・・・持ち得ていた憤りがすっ飛んだ。


全く理解のできない要求に口の閉まりが悪くなる。


聞き間違いかと、むしろそうであってほしいと見つめ上げるのに妖艶な笑みでそれを否定する姿に金縛り。


本当・・・何なのこの人。


いや、分かってる。


理屈の無い探求心。


子供なのだ。




「・・・ゆ、誘拐ですか?」




それでも一応言葉でその響きを確認すると肯定する様な頬笑みを返されようやくの諦め。


本気だ。


本気でそれを言っている。


きっとそれも私を誘拐した事と一致する探求心からくる物なのだろう。


だけど誘拐というのはそもそも誘拐するだけの理由や根拠があっての物。


はっきり言って私にこの人を誘拐する理由は無いんだ。




「・・・・・・お断りします」



ずっと抱えていた頭を上げ、見惚れてしまいそうなグリーンアイをしっかり見返しそれを告げる。


驚くのは言われた方の彼が酷く困惑し私を覗き込んできたから。


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