THE FOOL
「・・・・ねぇ?本当に茜ちゃんが君を選ぶと思う?」
「・・・・選ぶ。選んでもらった」
そうはっきりと答え変な動悸が走る中で必死に首元を探って細いチェーンを指先に絡める。
仕事中さすがに指にはつけられないそれをチェーンに通して首に下げているんだ。
確かに宝石である輝きが光りに触れてきらりと光ると、それを見つめていた雛華さんが嘲笑的な声を響かせた。
「・・・安そうな指輪だね。それと同じ物を何人の女の子が持ってるかな?」
その言葉は・・・・。
あまりそのままの意味で取り入れたくない言葉を愉快そうに響かせた雛華さん。
その瞬間からさっきまで純粋で綺麗に見えていたグリーンアイが悪魔のそれに見えて仕方ない。
驚き声を失って、馬鹿みたいにその指輪を握りしめている私に追い打ちをかけにくる声。
「芹ちゃんは茜ちゃんの気紛れに選ばれた女の子1人なんだよ?」
「・・・っ・・違います」
「ははっ、勘違いの思い込みって・・・凄いね」
「違います!茜さんは私の事をちゃんと好きでーー」
最後までその言葉は言いきれなかった。
言いきるより早くドンと壁に押し付けられた体。
今までで一番至近距離の顔。
僅か10センチ?
その距離で悪魔の様な頬笑みで私に自惚れるなと牽制する彼に鳥肌が立った。
「・・・・・悪いけど、俺の方が茜ちゃんと付き合い長いんだよ?だから・・・どっちが茜ちゃんを理解してるかくらい考えればわかるでしょ?」
「・・・っ・・・・違う。茜さんはそんな人じゃない。茜さんにはっきり言われたわけじゃないそれを信用して認めたりなんて絶対しない」
軽く・・・・自分の手が震えている。
声も振り絞っているのに震え、今にもその塊が溢れそうな涙腺を感じながら堪える。
精一杯の強がりを眉根に寄せて、せめてもの救いであるそれが他者からの言葉だと防御して。
だけど・・・、
そんな防御、いともたやすくこの人は壊すんだ。
私の言葉に動揺も変化も見せない頬笑みで今度は自分の携帯を取り出し何かを操作する彼。
それをまるでナイフでも見せつけられている様な恐怖で確認し、何かし終えるとそれを私の耳に当てる。