THE FOOL
視界に捉えた姿に疑問を浮かべ、次に立ち上る煙草の煙に視線が移った。
いや、逃がしたのかもしれない。
だって、そこに立っている2人組みときたらまるで・・・。
そうまるで、いや、確実にヤバい感じの2人組みなんだ。
明らかに「ヤ」のつきそうなその人達は自分の家の前に立っていて、私を見るなりにっこりと微笑む。
勿論、知り合いなんかじゃないし、さすがに借金取りに追われるほど苦しい生活をしていたわけじゃない。
だからこそ疑問で固まれば、のっそりとこちらに歩みを進める2人組み。
何となく逃げたらまずいのかと硬直していれば、目前まできて私を見降ろす2人が微笑みながら確認の言葉を告げた。
「・・・・天野さんとこのお嬢さんかな?」
【天野】
それは確かに私の苗字だ。
だから間違いのないそれに嘘は付けずただ素直に頷くと、その2人組みはにっこり顔を見合わせ再び私を見降ろした。
何だろう?
嫌な感じがする。
ゾワゾワと鳥肌が立ちそうな感覚に耐えきれないと声を響かせると、
「あの、・・・どういった御用でしょうか?」
控えめにそれでもはっきり投げかければ、煙草を蒸かしていた方の男が好意的な笑みを作りあげてその事実をつきつける。
「お父さんはとても親切で良い人なんだろうねぇ」
「そのお父さんがね、信用して保証人になっていた人がその信用を裏切っていなくなっちゃったんだよ」
なんだろう?
このまるで安いドラマのワンシーンは。
安いチンピラが押しかけ借金の形に娘を連れていく様な。
まさにそれを自分に再現されている様なドラマの様な現実に、使われた【裏切り】という言葉に再びの落胆。
また・・・裏切り。
さっきからついて回るそれに頭が痛くなりそうで、不動になっている私の肩に目の前の煙草を吸っていなかった方の手が置かれた。
「でさ、・・・君の両親・・・昨日からいないんだよ」
「・・・・えっ?」
さすがに驚き顔をあげれば嫌悪すら感じそうな嫌な頬笑み。
置かれた手が変に熱くて気持ち悪い。
そしてその手に込められる僅かな力。