THE FOOL





「・・・・・ごめん」



再度響く謝罪の声。


その響きに本当の罪悪感や謝罪の気持ちが含まれているのは私でも分かる。


そうして私を見つめる目の純粋で綺麗な事・・・・。




「・・・芹ちゃん、ごめん。・・・ごめんね」



ああ、本当に、


今にも泣きそうな子供の様だと感じてしまう。


いい大人の彼が想像するように泣きじゃくっているわけじゃない。


その頬にも目にも涙なんて浮かんでいない。


それでも悲痛な表情で眉尻を下げ私を見降ろすグリーンは精一杯それを表現している。


だから・・・、



「ごめ・・・本当に・・・、」



いいんですよ?



「本当に・・・、あのっーー」


「・・っ・・・恐かったんです・・・・・・」




雛華さんが謝罪にその説明を付け加えようとした言葉に、自分の声を被せてしまった。


だってもう、向けられる謝罪の内容は理解しているから。


その謝罪を向けられても、そのこと事態はもう自分ではどうしようも出来ないことだと理解しているから必要ないと断ち切った。


そうして声と一緒に失礼かもしれないと感じたけれど、思わず雛華さんの服の裾を摘まみ零した感情。


落とした視線は雛華さんの服を摘まんでいる自分の指先にあって、気がつけばその指先が震えている。


そう・・・・恐かった。


恐かったんだ。


そう、声に出し、自分の震える指先を見た瞬間に感情の決壊。


塞き止められない感情が見事涙になってその目からぽろぽろと流れ出てもう片方の手も雛華さんの服を掴んでしまった。



「・・・っ・・ふっううっ・・」


「せ・・りちゃ・・・、芹ちゃん?芹ちゃん・・・」



こういう状況に慣れていないのか、困惑して私の名を呼び覗きこむとしたりワタワタしている彼の姿。


本当、茜さんとは違う。


きっと彼はこういう扱いにもスマートで、さりげない仕草で慰めにかかるんだろう。


だから・・・よかった。


目の前にいるのが雛華さんで。


全然スマートじゃなくて。


逆にそれに安心する。


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