THE FOOL




もしかして・・・とんでもない人に借金を追ってしまったのかもしれないと今更思っても後の祭り。


そう私に今できるのは、この人の探求心にただ付き合いその身をささげるのが唯一の返済なんだ。


それに・・・、


チラリと繋いでいる手に意識を走らせる。


優しく柔らかく温かいそれ。


そうして見上げる表情も同じように作用して、どうしても悪い人には感じられない。


それに、


私が・・・・、


今の私には・・・必要なんだ。


ボロボロに壊れた自分の心に優しく向けられる癒やしの緑の様なグリーンアイ。


この人の裏の無い無邪気さが・・・。


もう・・・裏のある人間関係には疲れてしまったから。




「・・・・・・・いいところ、ありますよ」



そう告げて微笑んでみる。


そうして繋がっていた指先に力を僅かに込めると目の前の彼が嬉しそうに微笑んだ。







そう、コレが・・・・



私と彼の、



雛華さんとの【誘拐】の始まり。



今はまだ【誘拐】という名の逃亡。





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