THE FOOL





Side 雛華



ーーーー数時間前ーー




目の前で泣き崩れる彼女の反応に戸惑う。


だって・・・、予想と違う。


描いていた反応と違う。


その事体に完全に混乱する頭が何をすべきが弾きだすのに、それをするのが恐くて否定を返す。


そうして更に脳内がバグを起こして不動になったんだ。



「・・・・なんで?」



やっと響かせた言葉にも傷ついているらしい彼女は反応しなくて、ただ目の前で傷ついて蹲る姿に堪え切れなかった罪悪感の浮上。


泣かないで・・・、


ねぇ、


違う・・・。


本当は違う・・・・。



ねぇ、泣かないでいいんだ、傷つかなくていいんだ。





だって・・・、








茜ちゃんは・・・君を本気で大好きだから。








そう彼女には聞こえない心の内で告げて、この元凶になった携帯をポケット上から握りしめる。


さっき彼女に聞かせた、偽りばかりの作りあげた【真実】。


何てことのない、本当に話していたのは茜ちゃんの仕事についての内容で、取引や利益についての話だった筈。


それと芹ちゃんへの話題の会話を勝手に編集して作りあげた偽物の会話。


本来為されていないある筈のない密談の証拠。


何故そんな事をしたかと問われれば・・・。


俺のいつもの探求心。


あの時、


彼女と目が合い、彼女が俺の眼を褒めた時に選んでしまった。


純粋に、何の見返りも無しに俺を褒めた姿は優しくて、


どこか俺の身内の存在に近いと感じてしまった。


俺の無茶苦茶な行動に呆れはしても許し付き合ってくれる家族。


そんな優しさを彼女の感じ取り、更に茜ちゃんの恋人と知ってそれに選んでしまった。


状況としては、条件としてはいいじゃないか。


元々身分不相応な恋人に、引け目を感じつつ幸せを感じている彼女。


そんな彼女がいきなり恋人の裏切りを知って、しかもそれが小さくも自分が懸念していた不安。


その内容が自分を嘲笑軽視する様なそれなら、憤りを感じて無茶な行為もしてくるかと。


自分の誘いに怒りのままに乗るかと思った。


実際、本で得たそれには逆上するパターンがほとんどだったんだ。



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