THE FOOL
そして、コレが嘘だと告げれば、彼女なら許してくれるんじゃないかという浅はかな考え、行動。
結果・・・・、
こうして目の前で彼女が傷ついて泣き崩れて蹲る。
予想外のそれに俺は真実を告げるのに怯えて、告げた後に向けられるであろう責める彼女の眼差し、表情を恐れて不動になった。
早く・・・・教えなければいけないのに。
茜ちゃんを恨まないで。
茜ちゃんは君を・・・・本当に大切に思ってるのに。
自分で・・・それを植え付けたくせに、
過ちに気がついても自分の身可愛さにそれを見過ごした。
そのままどれくらい目の前で泣く彼女を見降ろしたか。
不意にふらりと力なく立ち上がった彼女が焦点もままならないような目で歩き出すのに、慌てて引きとめるようにその疑問を投げかける。
「・・・っ・・待って、ねぇ、何で?こんな風に裏切られて怒らないの?・・・っ・・・何で泣くの?」
俺の質問にぴたりとその歩みをやめ、ぼんやりと思考を働かせていた彼女が力なくその口の端をあげると答えを口にした。
「・・・・好きだから」
「えっ?」
「・・・・裏切られても・・・好きで苦しいから。・・・怒りよりも強く・・・・・悲しい・・・・」
言い終わるより早く嗚咽に切り替わる声。
そうしてまた簡単にその淵に身を沈める彼女に何も出来ず、しなくては・・・言わなければいけない言葉を口に閉じ込めたままその背中をただ見送った。
遠ざかっていく後ろ姿。
何してるんだ?
早く追いかけて、「違う」と言わなくては。
あんな風に簡単に壊れてしまうほど彼女の気持ちを傷つけたのに、彼女は茜ちゃんが好きなのに。
だけど・・・、
何でだろう?
あの子に・・・・責められるのが恐い。
どこか、家族に似ていると感じた彼女に責められるのが酷く恐い。
きっと、笑って許してはくれない。
きっと・・・・・嫌われる。
そう思ったのに・・・・気がつけばその姿を追ったのは、
罪悪感。
どうしても拭いきれないそれに苛まれてズキズキと痛む胸の内をすっきりさせたくてあの姿を追った。