THE FOOL





どうしても拭いきれないそれに苛まれてズキズキと痛む胸の内をすっきりさせたくてあの姿を追った。


追いかけて、見つけて、すぐに声をかければいいのにやはり恐くて躊躇って。


そうしてずるずるとその背中を見つめて追いかければ閑静な住宅街に入りこんでいる。


さすがにもう声をかけなければと何度も心の声と対峙して、ようやく自分の意を固めるそれ。


彼女が泣く姿を見続けるよりは一時の責める表情のが耐えられる。


そう思って、彼女が曲がった角を足早に追いかけて曲がろうとしてすぐに身を隠した。


捉えたのは彼女といかにもな男2人組み。


何事かと覗きこめば微かに聞こえる内容からありきたりな事体は把握した。


借金。


両親の逃亡。


それによっての彼女の拘束。


でもきっと・・・・・今彼女が一番に落ち込んでいるのは。


【裏切り】という項目。


先に俺が悪戯に与えてしまった傷痕に追い打ちをかけるように切りこまれたそれは、もう・・・。


彼女の気力を奪ったのだとその姿を、表情をみて痛感する。


だとしたら、


全ての元が俺だとしたら、


俺が出来る事はやはり、


俺の良いところは決断すれば行動の早いところ。


感情のままに彼女を拘束した男を殴り飛ばして意表を突く。


当然彼女も困惑の眼差しを向けていたけれど、今はまず先に・・・僅かばかりにも彼女に対して謝罪がしたくて。


簡単に解決できるそれは借金の完済。


大した額でもない。


子供の時から遊びで覚えたマネーゲーム。


持ちえた金額は特に使う事もないから溜まりに溜まって放置しっぱなしだ。


そうして金銭で片のつく揉め事や悩みは彼女の中から掻き消したつもりだった。


あっさりその身を自由にし、振り返った彼女は困惑に固まる。


さぁ、今度こそ感情面でも楽にしてやらないとと緊張高まる胸をなだめながら彼女と対峙した。


いざ対面すれば、上手く言葉が出てこなくて。


しどろもどろで声を響かせる。


そんな俺を不思議そうに見つめる彼女に酷く焦って怯んで。


それでも何とかその言葉を言いかけた瞬間に、



「・・・っ・・・恐かったんです」



響いた声と俺の服を抓む震える手。


捉えた姿はその視線を下に落としてその恐怖を俺に伝える。



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