THE FOOL





なんて・・・小さくて頼りない存在なんだろう。


不意に感じた彼女の印象。


小さなその体に今は葛藤をめいいっぱい詰め込んで、今にも崩れ落ちそうなのに必死にその場に立っている。


ああ、早く、少しでも彼女を楽にしなくてはと、何度かその事実を伝えようと口を開く。


のに、・・・・・自分が逃げているのか、彼女のタイミングが良すぎるのか。


決定的な事を伝えようとすると掻き消される真実。


その度にその勇気も削がれていくというのに。


彼女から零れる「ごめん」「ありがとう」の言葉に、俺がそれを言われる様な男じゃないと罪悪感で胸が痛い。


この痛みからも解放されるためにも、もう言わなくてはと必死にその声を感情を振り絞って口を開いた。





「・・・ありがとう。・・・・・雛華さんがいてくれて、助けてくれて嬉しかった・・・・・」






頬笑みと一緒に向けられた言葉。


その瞬間に完全に真実を告げる勇気を打ち砕かれて、同時に湧き上がる感情に差し替えられる。


柔らかい頬笑み。


もうその眼に怒りは無くて、だったら・・・・。


もういいんじゃないか?


真実を知らなくても彼女はこうして笑っている。


俺に・・・・微笑んで。


何故?・・・・笑う?





何で・・・・君は裏切られても茜ちゃんを許せて。


何で・・・・こんな事をされても俺に微笑む?




ああ、前者は分からないけれど・・・・。


後者は、あの真実を知らないからだ。


あの真実を知らない彼女にとって、今の俺は救世主・・か。


そうして、感謝ばかりに俺に微笑んで。


俺は・・・・、







また・・・、


もっと・・・、



芹ちゃんの笑顔が見たいと思ってる。







これは・・・・どんな探求心だ?



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