THE FOOL
どんな理由でも、今一番興味のある彼女が1千万という後ろめたさを抱え俺の手元に収まった。
だったら、
もうここまできたら取り返しなんてつかない。
罪悪感も押し込めて、今はただ彼女を近くで探求したい。
俺を初めて・・・、
家族以外で純粋に綺麗だと言ってくれた女の子。
小さくて可愛い芹ちゃん。
ああ、そう言えば、
【可愛い】なんて事も身内以外に使うのは初めてだったと気がつき、それもまた新たな探求心だと胸がざわめく。
誰にも見つからないよう、取り戻されないよう、細く華奢な指先に自分の手を絡めて歩き出すと、戸惑いながらもついてくる姿に胸が強く跳ねた。
痛いくらいのそれに経験が無い物だから、どこか体が悪いのかと不安になる程。
なのに、芹ちゃんの姿を見つめればそこにいると安堵して落ち着く。
芹ちゃんとの【誘拐】の開始。
でもここで引き返すべきだったのだと、
今この時は気がつかずに彼女の手を掴んだ。