THE FOOL
暗い・・・、暗すぎる。
そんな事を思った瞬間にかなり重要な事実を思い出し声をあげた。
「ああっ・・・」
「・・・何?」
「・・・・・・・いえ・・、ここで暮らすには欠けているものが」
「うん・・・・、何が?」
私の焦りなどまるで分かっていない雛華さんがなんとか張り付いている私を振り返りながらそれを確認する。
そう忘れていた。
生活する上で重要な事。
「電気と水道にガス通さないと・・・、この家は単なる素泊まりの空間です」
そう気がついたここは確かに時の止まった場所だった。
雨風は凌げても生きる上に必要な物が欠けすぎている。
その事実に最初は落胆し、でもすぐに僅かに歓喜する。
これは・・・・この場所を離れる口実になるかもしれないと。
浮上してしまった恐怖心はどうあっても拭いきれなくて、とにかくお化け屋敷に泊まる感覚に近い今それを回避できるのはいいチャンスだとほくそ笑む。
「あの・・・提案なんですけ・・ど」
「うん?」
「その・・、まぁ、こんな状態ですし・・・・、今日はどこか安いホテルに泊まるとか・・・・」
「・・・・・誰がそれ払うの?」
おう・・、正論です。
どこかでこの状況を作り出した雛華さんなら出してくれるんじゃないかと期待していて。
しかもさっき私の借金をポンと返したのだからホテルの一室くらい簡単に払ってくれそうな物なのに。
そんな事を思いつつ、良い事に気がついたとすかさず再度の提案を試みる。
「あ、じゃ、じゃあ・・・、私の借金に上乗せでいいんで!・・ホテル・・・」
「・・・・・・却下」
良い案だと思ったそれも呆気なく雛華さんの真顔に却下され意気消沈。
何故か頑なに拒む雛華さんに疑問を走らせれば納得せざるを得ない返答を返してくる。
「正直言えばホテルを取るのはわけはない」
「じゃ、じゃあ、」
「でも、俺が持ってるのってカードなんだよ」
「・・・・はぁ、」
「カードってサインするでしょ?場所われるでしょ?そこまで言えば理解出来る?」
そう言って振り返りながら見降ろしてくるグリーンアイを見上げて頷いて溜め息をついた。
つまり・・・足がつくと。