THE FOOL
服装は・・・・見える限りはフード付きの半そでパーカー、その下に指の付け根まで長い袖のロンTを着用。
パンツは・・・、
って、何してるんだろう。
ここまでしっかり観察していた自分に呆れ、何だか良く分からないけれどこの会社に勤めている様な服装でない事に不審者と断定して再度の注告。
「あの、清掃入ります!と、言うより、無断侵入で警備に通報しますよ!」
若干の逃げ腰。
それでも言いきって接近するのに、相も変わらず不動な姿。
さすがに馬鹿にされているのかと苛立った感情が自分を行動的に突き動かす。
読んでいた本をおもむろに取り上げ、自分の存在をこれでもかとアピールすれば。
ゾクリと震えた。
サングラスでその視線ははっきりとは分からないのに、確実に自分を捉えたらしき顔の向き。
その瞬間にさすがに大胆で危険な行動だったかと、取り上げた本をおずおずと差し出す。
しばらく不動だったその人が差し出された本を静かに受け取ると、ギシリと座っていた椅子から立ち上がり歩き出す。
歩きながらパラパラと本のページを捲り、さっきまで読んでいたページを探しだしたのか再び読みふける。
唖然としてその姿を視線で追っていれば、、
「あっ・・・・」
と、思った瞬間、注意する間もなくガラス張りの壁に激突する姿。
躊躇いなく突っ込んだ反動は大きく豪快に後ろに倒れた姿に言葉を失う。
何なんだろうこの人。
さすがに羞恥を感じて取り乱すのかと、その行動を思わず観察すれば。
「・・・・・」
声を発する事もなく、手元に落ちていた本を手に立ちあがると今度は扉を確認し、それをくぐると本を読み歩く姿に呆れてしまった。
いつか・・・・あの人は死ぬかもしれない。
そんな感想を抱き、結局あの人が何者だったのか理解できずに自分も仕事だとバケツを手にした。