THE FOOL
触れたいへの探求心
こんな風に男の人と手を繋いで歩くのはいつブリだろう?
そんな事をぼんやりと考えながら濃紺に点々と広がっている星を見上げて考えて、ああ、高校の時の彼氏が最後だと答えを得て小さく頷く。
だけど・・・、あんまり癒やされはしなかったなぁ。
楽しくて、確かに好きだったけれど・・・。
あっさり浮気され別れてしまった苦い記憶。
浮気だったり騙されたり、私は男運が悪いのか見る目が無いのか。
そう思った瞬間に後者でないといいと思い、フッと隣の存在に視線を走らせた。
少し見上げる様な感じの身長差。
下からアングルでも前髪やや隠されるグリーンアイ。
せっかく綺麗なのになぁ。と、思いつつ、気がついた事を馬鹿正直に口にしてしまった。
「そう言えば・・・サングラスやめたんですね」
ああ、余計なひと言を言わなければ良かったと後悔する。
その言葉で完全にそれを忘れていたと、はっとして顔を押さえた雛華さんが慌ててそのグリーンアイをサングラスの闇に隠してしまったから。
ああ、雛華さん。
それはサングラス・・・【サン】が照っていない今は意味の無い代物なのに。
そんな事を思いながらしっかりと顔にそれを密着させる雛華さんに苦笑いを浮かべ、人気のない夜道を2人で歩く。
近くにはちょっとした川があって、大通りから隠れた様な場所に位置するここ。
そうしてようやく煌々と明かりのついている目的の店を遠目に確認し、同時に何となく気まずい物も手前に見つける。
いや、場所的に確かにあるかもしれない。
人気が無いのも頷ける。
なんだか変な緊張が走り変な動悸に占められている私の視界に入ったのは、妙にムーディな水色のライトでぼんやりと入口を示す、・・・うん、恋人の皆様御用達のそれです。
何でだろう。
この自分達が使うわけではないのに目の前を通るだけの緊張感は。
あえて沈黙を守り見えないふりをして進むのは、この気まずさを誤魔化したくていつも以上に口数が増えて違和感を与えそうだったから。
そして、下手に口を開いて余計な事を言ってしまえば・・・。
隣にいるこのお人のどんな探求心が働くか分かった物じゃないからだ。
それでも雛華さんはさすがにこういった場所の意味を知っているんだろうか?