THE FOOL





この会社も、他の大手の会社も多くの会社をまとめる彼の家系。


今は彼の父が管理するこの会社は後々彼がその頂点に君臨する。




大道寺 茜 (23)




そんな彼にバイト中私は見染められたのだ。






「怒らないでよ~。芹ちゃんは俺の物って意思表示じゃん」


「まだ籍入ってないですもの」


「あ、そんな危険な発言しちゃう?」




危険に光るグリーンアイに働く危険予測でにっこりと微笑む。


逆らう意思の放棄を示すそれに満足げに微笑んだ彼の姿。


私はきっとこの先ずっと彼のこれに遊ばれるのだろうと若干の諦め。


それすらも理解する彼は上機嫌で私を引き寄せると唇を重ねた。


おかしいおかしいおかしい・・・・。


確かここは会社の一角である筈場所なのに、そんなところで人目もはばからずキスをかましてくるこの男。


その感覚にはさすがに耐え切れずに胸を押し返して逃げ出せば。


どうしたの?と問いかけるように首を傾げる可愛い仕草。


思わずキュンとしつつもされた事を取り下げられず、口元を押さえて後退してそしてその姿を捉えて声が漏れた。



「・・・・あ、」


「ん?」



私の声と驚きに反応し、自分の後ろに走っている視線を追って茜さんも後ろを振り返る。


茜さんの後ろに捉えた姿は記憶に新しい。


狭い通用口の壁に寄りかかり、あの時さながらに本を読みふけるその姿。


相変わらずサングラス着用で本を読みふける姿に、その視力を心配してしまいそうだ。


そして相変わらず・・・・。


まるでこの光景など見えていないかのように反応を示さない態度に一瞬呆け、そしてすぐに彼の身を案じた。


いや、案じる必要も義理もないのだけど。


早くその身を隠さないと警備に捕まって放り出されるぞ!と叫びたい気持ちで見つめていれば、私と同じようにその姿を確信した茜さんがクスクスと笑って私を見つめた。



「その様子だと・・・・どこかでもう見かけた?」


「へっ?あ、え?」


「神出鬼没な奴だからゴメンね~」



そう言って再度彼を振り返る茜さんがゆっくりと彼に近づくのをただ見つめた。


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