THE FOOL





ここで働いた好奇心に私は答えられる自信ありませんから。


そんな心の叫びは雛華さんに届いているだろうか?


その答えは次の雛華さんの行動で理解し慌ててその手からそれを奪い取った。



「・・・・芹ちゃん?」


「いや・・・、何ていうか・・・・TVはみたい気分じゃないですね」


「あ、そう?・・・ごめん」



今にも大画面のそれのスイッチをリモコンで入れようとしていたのを苦し紛れに阻止して心臓が暴れる。


ああ、一体。


この人はこの場所を理解しての行動なんだろうか?


せめてそれだけは知っておきたいと泣きたい気分で真剣に思う。


いや、いくら雛華さんでももう23歳だ、その間に全くそういった事を知らずに大きくなったとは思えない。


知識は、予備知識程度には知っているだろう、・・・うん。


自分でそう納得し、確認するように視線を雛華さんに戻していけば、ようやく目を覆っていたサングラスを取り外し適当に近くのテーブルにコトリとおいた。


そうして絡んだ視線は酷く柔らかく私に頬笑み緊張を解いた。



「芹ちゃん、良かったね」


「は?・・・えと・・・何が?」


「ん?ほら、あの暗闇恐がってたでしょ。やっぱり懐中電灯だけじゃ耐えきれなかったんじゃないかな?って」



屈託のない笑顔に、なんだか馬鹿みたいに意識している自分が純粋でない気がしていたたまれない。


雛華さんに少なくともこのホテルにみあった意味合いの物は皆無で、ここに来て警戒が解けるとそれを示すように雛華さんの両手を掴む。


絡んだ指先の熱が心地いい。



「芹ちゃん?」


「・・・・雛華さんはやっぱり凄いです」


「ん?」


「・・・・雛華さんを見てると・・・なんか自分が汚れてる気がする」



苦笑いでそう告げ顔をあげれば疑問に首を傾げた彼の困惑顔。


そうして彼なりに考えを及ばせ響かせる声。




「・・・お風呂・・・入る?」




躊躇いながら言われた言葉に一瞬驚き、でもすぐに私の言葉を勘違いして返したのだと気がついた。


そう言う意味じゃないんだけど、まぁ、いいか。


どこか抜けた部分も全て雛華さんの長所に感じて、クスリと笑って指先に触れる雛華さんの指輪に触れた。


・・・・・直後に気がつく問題点。





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