THE FOOL
あ、ここに座ってたんだ。
そう寝ころんで気がついたのは手に触れているシーツの部分はひんやりとしているのに、自分の背中に感じる所は熱の余韻を示している。
つまりさっきまでその熱の元があった場所。
雛華さんがここでTVを見ていたんだ。
雛華さんが・・・さっきの映像・・を?
「・・・・・」
思わず無言でその身を起こして複雑な葛藤に襲われる。
最初の問題への回帰にも近い葛藤で、さっき確認した雛華さんは何食わぬ様子でAVを見て、特に好奇心の欠片も見せずに今は入浴中だ。
あれ?
なんで?
あの映像には特に好奇心や探究心が働かなかったって事なんだろうか?
と、言う事はやはり知識的には知っていて今更な事?
つまりはこのホテルの意味だって知っていて、私が馬鹿みたいに意識している理由も理解している?
なんか嫌!!
すっごく私恥ずかしい人じゃない?
もし知っていてのこのノータッチなら雛華さんは思いっきり私に興味ないのに、勝手に意識して牽制していた感違い女じゃないの私。
いっそ撃ち殺してほしいと思うほどの羞恥心に悶え、起こした体を折り曲げベッドに突っ伏してその感触を確かめていれば。
「あれ~、消しちゃったんだぁ?」
「・・・っ・・・」
響いた声に反応して顔を上げ、声の方を振り向いて不動になってしまった。
体は。
心臓は一瞬爆発して、直後にあり得ないくらい早く可動中。
捉えた雛華さんと言えば水滴を体にも髪にも適当に残したままバスローブを羽織って、水滴をポタポタ落とす髪をかきあげ普段は隠しているグリーンアイを明確にした姿でこちらに近づきTVを見つめた。
「てっきり見てるかと思った」
「じょ、冗談ですか?本気ですか?」
「ん?なんか質問の意図が良く分からないけど」
「同感です」
どうも噛みあわない会話の裏にお互いどんな本音があるのだろう。
それでも私の言葉や懸念に本気の疑問顔で方眉を上げる雛華さんに変な悪意は見えていない。
やはりここで意識する私が自意識過剰なんだろうか?
そんな考えを巡らせている間にすぐ近くまで来ていた雛華さんが、スッと手を伸ばすとリモコンを手にTVに向けた。
あっ・・・と思う時には響く卑猥な音声に落胆と羞恥。