忘れられない君との夏。


「重くない?」


「大丈夫」


「いやー助かったわ」


これを運ぶまでに汗だくになるところだった。


私は片手に持ってきた下敷きで洸を仰ぐ係に徹する。


「あれ、葵リボンは?」


洸が私のブラウスの首元あたりをちらりと見る。


いつもなら赤いリボンがついてるはずだけど…


「あー、うん、めんどくさくて〜」


「うわっ、女子力ー」


「うるさ」


たしかにこれがワンポイント!とか言ってかわいい感じの女子達ははしゃいでいるが、正直邪魔だ。


「ま、そこも葵らしいか」


「なにそれ女子力ないのが私ってこと?」


洸は、はは、と笑って誤魔化した。


こいつ許さん。


まあ扇風機のこともあるし、ここは広い心で我慢してあげよう。

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