忘れられない君との夏。
3日目
「葵ー!」
暑さで早くも帰りたくなる朝、後ろから声が聞こえて、私はブレーキをかける。
「おはよー、洸」
振り向くと、爽やかな笑顔で手を振る洸がいた。
「のせて」
「ちょっと、重いー」
そう言いつつ私はペダルを思い切り踏み込む。
「おっ、すげえ脚力」
「てかフツーあんたが前でしょ!てか陸上部っ!」
もう校門は目の前、少しだけの遊び。
「朝からイチャついてんなー」
「違う!」
「お、亜美ー、はよっす」
全力で否定する私と、呑気な洸。
そんな私たちを冷めた目で見ながら横切っていく亜美。
「亜美っ、助けてよ!」
「やだね、部活忙しい」
くそお、親友を裏切りやがって!
「葵、スピード落ちてんぞ」
「うるさいっ振り落とすよ!」
私の罵声を受けて、洸は明るく笑った。