忘れられない君との夏。
「って、合格してないからわかんないけどね」
ふざけてそう言う洸に、私は笑えなかった。
洸は、受かる。絶対。
何故か私は確信していた。
そして、多分本当にそうなるんだろう。
黙ったままの私を見て、洸は笑うのをやめた。
「ごめん、葵。今まで黙ってた。」
「みんな、知ってた?クラスの子達も、亜美も?」
「うん、多分なんとなくは。別に葵に言わないでほしいって言った訳じゃないけど、みんなそれもなんとなく思ってた。」
「…そっか」
「葵、口きいてくれなくなるんじゃないかって、思って。正直、今も」
「…しないよ、そんなこと」
私はようやく薄く笑う。
「はは、だよな」
「…ごめん、気遣わせて」
東京に行く人は、毎年2、3人ほどいる。
ただ最近は就職する人も少なくて、うちの学年は全員進学だし、そこまで頭が良いわけじゃないから、そう言う話は聞いてなかった。
「俺のことはさておき、とりあえず今日の分終わらせなきゃだろ?」
「うん、そうだね」
私はシャーペンを強く握りしめた。