忘れられない君との夏。
学校から出てしばらく歩くと、赤と白でできた提灯が見え始めてきた。
「明日、お祭りだな」
そう言った洸の視線の先には毎年恒例のお祭りのポスターが貼ってあった。
「みんな行くのかな」
「どうだろうな、一応受験生だしな」
苦笑する洸を見て、思う。
洸にとっては、最後かもしれない。
「行こうよ、洸」
「え?」
突然の私の誘いに、驚いた洸が目を見開いた。
「補習の後に、ちょっとでもいいから!」
洸はきょとん、としてから笑って私の頭に手を置く。
「葵が必死になって俺を誘ってるの、なんか優越感」
「ちょっと、真剣に言ってんの!」
「じゃあ浴衣着てこいよ、かわいいやつ」
それだけ言って洸は手を振って行ってしまった。
「明日ね!」
私は洸の背中にそう言って反対方向に向かって自転車を漕ぐ。
かわいい浴衣、お母さんに出してもらわなきゃ。
いつもよりも心臓が楽しそうにはねた気がした。