忘れられない君との夏。
デートなんかじゃ、ない。
たしかに2人っきりだけど、でもそんなんじゃない…よね?
『かわいい浴衣着てこいよ』
洸の笑顔が、頭に浮かぶ。
心臓が跳ねて、体も跳ねそうになる。
そんなんじゃない、そんなんじゃない。
私は自分に言い聞かせながら自転車を留め、校門をくぐる。
靴を履き替えて、階段を上がり、教室に向かう。
「…おはよー」
「おはよ」
教室のドアを開けると、すでに来ていた洸が、平和そうな笑顔で普通に挨拶を返してくる。
からかわれているのは、私だけ?
それとも、洸が動じてないだけ?
「楽しみだな、祭り」
ほら、そうやって素直に言われると、なんだかこちらが恥ずかしい。
「…うん」
私、子どもだなあ…
席について筆箱を出していたその時、廊下からパタパタと数人の足音が聞こえて来た。
足音が止まったと思ったら、いきなり教室のドアが開いた。
私は驚いてそちらに目を向ける。
「あ…」
高野さんと、このまえよりも増えた取り巻きの方々。
目があって、思い切り睨まれる。
…なんかしたっけ