忘れられない君との夏。
「…葵がそれでいいなら」
なぜだか、胸がえぐり取られた。
「じゃあ、5時半に校門前で」
高野さんは少し不満そうな顔をしたが、そう言って教室を出た。
私は緊張して上がっていた肩が緩む。
洸はそっぽを向いたままだ。
「えと、あの、洸」
私はそっと洸の前まで行く。
「ごめんね、勝手に」
「…お人好し」
「いたっ」
俯いた私のおでこに容赦ないでこぴんがとんできた。
「洸に言われたくない!」
席に着いた洸の背中を見つめながら、私は拳を握りしめる。
「…それに、みんな洸のこと大好きなんだよ、本当に」
洸は、何も言わなかった。
これで、よかったんだよね?