忘れられない君との夏。
「あ、きた」
「…え!?」
私は驚いて目を見開く。
家の前には、浴衣を着た洸がいた。
「わざわざ着てくれたの?」
「葵、転ぶかなって思って」
紺色の落ち着いた生地の浴衣は洸にすごく似合っていて、なんだか自分が恥ずかしくなる。
「…隣並びたくない」
「なんでだよー」
洸に促されて、私は並んで歩き始める。
「葵、浴衣着て着た」
「洸が着てこいって言ったから」
…かわいくないけど。
「いいね、似合ってるよ」
サラッと言う洸に、私はなんて言っていいか分からず思い切り背中を叩く。
「いって!」
ほんと私、かわいくないなあ…