忘れられない君との夏。
足は痛いけど、そんなの気にならない。
洸と話したい。
本当は、洸と2人で話したかった。
「洸!」
どこにいるか分からない。
親子、友達同士、恋人。
沢山の人をかきわけて、洸を探す。
洸…どこにいるの?
「葵!」
肩を掴まれ、軽く引かれる。
私は思わず振り返った。
「あ…洸」
「バカ、勝手にいなくなんな!てか携帯ちゃんと確認しろよ!」
洸の片手には、スマホが握られている。
慌ててカバンの中から取り出すと、洸からの着信が10件もきていた。
洸も、私を探してくれてたんだ。
それだけで、胸が締め付けられる。
「向こうで高野たち待ってるから、行くぞ」
洸が背を向けて、歩き始める。
「…洸っ」
思わず私は洸の手を掴んだ。
骨ばった、大きい手。
男の人の、手だ。
「葵?」
洸が、優しく私の名前を呼ぶ。
私の言葉をまってくれてる。
でも、なんて言っていいか分からない。
私は何も言えず洸の目を見つめる。
「…あのね、洸」
「葵」
私の声を遮るように洸の手を掴んだ私の手が掴まれた。
「俺と、逃げる?」