忘れられない君との夏。


気づいたら、私たちは走ってた。


人の波を抜けて、お祭りの喧騒から逃げ出すように、ひたすら走った。


意味も考えず、洸の言葉に私はうなずいていた。


胸が、跳ねる。


洸に腕を掴まれてたはずが、いつのまにかしっかりと繋がれていた。


この時間が、ずっと続けばいいのに。


受験のことも、高野さんのことも、東京のことも、なにも考えない。


あるのは、洸とわたしだけ。


それだけの時間が、ずっと、続けばいいのに。

< 54 / 88 >

この作品をシェア

pagetop