忘れられない君との夏。
涼しい風が首元を撫でる。汗で濡れた体には気持ちが良い。
疲れた私たちはやっとのことで走るのをやめた。
手が繋がったまま、2人で肩で息をし合う。
「あー走った!」
そう言う洸の横顔はすごく気持ち良さそうで、私は良かった、と思う。
「やっぱり陸上部はめちゃめちゃ早いね」
「だろ〜…てかお前下駄であんなに走って…っておい!」
洸の視線が私の足元に釘付けになる。
なんだろうと思って私も自分の足を見ると、鼻緒が血だらけになっていた。
「あ、いつのまに」
「バカ、なんでそんな落ち着いてんだよ!」
「別に大したことないよ、これくらい」
「これくらいって…血、出てんだろ」
洸はしゃがんで、私の手を引っ張る。
「ちょっ、いいって…わっ!」
私はされるがままに洸の背中に乗っけられ、あっさりとおんぶされてしまう。
「あそこの公園まで我慢しろって」
「洸!歩けるから!」
私の声を無視して、洸は歩いていく。