忘れられない君との夏。
「え?ごめん、聞こえなかった」
花火の音が私の声をかき消してくれた。
「…ううん、なんでもない」
ホッとしてる自分の中に、少しだけがっかりしてる自分がいて。
こんなこと言ったら洸を困らせるだけなのに。
私には言う資格もないって分かってるのに。
『葵はどうしたいの?』
これが、私の本当の気持ち…?
洸に東京に行って欲しくない。離れたく、ない。
私は空をみたまま、そっと洸の手に触れる。
洸は何も言わず、私の手をそっと握った。
花火が、空に大きく咲く。
その瞬間、なぜか、わからないけど、でも。
唐突に思ってしまった。