忘れられない君との夏。
学校に着いて、駐輪場に自転車を留める。
校門を通り抜けようとして、足を止める。
「…おはようございます」
「お、はよう」
そこには、真顔で私を見つめる高野さんがいた。
…そうだ、昨日私は洸を連れて逃げてしまったんだ。
私が一緒に行こうって言っておいて!!
「夏目先輩、あの…」
「ごめんなさい!!!!!」
私は思い切り頭を下げる。
「昨日、私が行こうって言ったのに、結局逃げてしまって…あのね、洸は悪くないの、私が無理矢理…」
「夏目先輩、洸先輩のこと好きですよね」
一瞬、誤魔化そうかと思ったが、高野さんの顔が真剣なことに気づいて、やめた。
「…うん。好き」
「…っ、洸先輩、東京行くんですよ。彼女になんて、なれませんよ」
「うん、わかってるよ。それでも、好きなの」
「…諦めてください」
高野さんの声は、震えていた。
きっと、私なんかよりずっと前から洸のことをちゃんと見てきてる。
洸のこと、すごい好きなんだな…
「ごめん、できない。本当に、好きなの」
でも、私も負けないくらい好きだって言えるようになりたい。
だから、ここで折れたらだめだ。
「先輩は、洸先輩の夢を奪うんですか?」
「…え?」
高野さんは、泣きそうな顔でそう言って、走って行ってしまった。
私が、洸の夢を奪う?