忘れられない君との夏。
「じゃ、今日も頼むなー」
相変わらずのやる気のない秋谷先生の顔と声。
まあでも洸と長く一緒に居られるし、アイスも奢ってもらえるわけで、割と得してるのかな?
「埃っぽいな」
洸が軽く咳き込む。
今日はこの古くて汚い資料室の整理だ。
「とりあえず本拾うか」
「うん」
そこらへんに散らばったり積み重なっている本を分野別に本棚に入れてゆく、地味な作業。
たまたま、同じ本を取ろうとして洸と手が当たる。
「あ、悪い…」
洸の声に被さるようにしてバサバサッと本が音を立てて私の腕から落ちる。
「…葵?」
私はバンザイの状態で洸から目を逸らす。
「…やっぱり葵、今日はなんか違う」
「…ごめん」
私はそっと洸の顔を見る。
今日一日、まともに見れていなかった洸の顔は、いつもと変わるところはないけど、なんだかいつもよりかっこよくて…
私は慌てて後ろを向く。
「…あのね」
「うん」
あいかわらずの優しい声に、少しだけ心が落ち着く。