忘れられない君との夏。
洸は、私の側にいたいって思ってくれてるの?
東京行きたい気持ち抑えて、私と…
あれ?
なんでだろう、
全然、嬉しくないや…
その時、耳に声が蘇る。
『先輩は、洸先輩の夢を奪うんですか?』
頭を、何かで殴られた気がした。
体温が一気に下がる。
私は洸の手を離す。
「…葵?」
「…ごめん、洸。どうかしてた。今の、忘れて」
私は、いつも通りに笑った。
笑って、落ちた本を拾う。
「そっか」
そう言って、洸も本を拾う。
今すぐに腕を引っ張って抱きしめたい。
好きだって何度も何度も伝えたい。
でも、言えない。
だって、東京は洸の夢だ。
私が嫌いな東京は、洸の夢なんだ。