忘れられない君との夏。
「洸はさ、完璧な人間じゃん?」
「…うん」
「だから、あんたまで完璧になんなくていいんだよ。ていうか葵には無理」
「え、なんか私普通にけなされてる?」
「そうじゃなくて」
亜美は思い切り足を上空に上げる。水しぶきが、私の方まで飛んで来て、「ちょっと!」と文句を言う。
「洸はさ、単純な葵が好きなんだから」
「好きだなんて言われてないよ!」
「単純な葵は葵らしく、素直になったら?」
亜美の言うことは、たまに難しすぎることがある。
私らしく、素直になる。
私の心の奥の単純な気持ちが、今はごちゃごちゃで見えない。
わからないまま、私は明日を、補習最終日を迎える。