忘れられない君との夏。
朝ごはんを食べてる途中、ふと思うことがあって、目の前の母親に目を向けた。
「…お母さんはさ」
「なに?」
「お兄ちゃんのこと、恨んでないの?」
町の人は、みんな言った。
うちのお兄ちゃんは東京に行って変わってしまった。親不孝者だって。
私も、そう思った。
でも、お母さんとちゃんと話したことはなかったよね?
「…恨んでないよ」
お母さんの顔はとても穏やかで、それ以上なにを聞けばいいのか分からなくなった。
「そっか」
私はいつも通り支度をして、いつも通り家を出る。