忘れられない君との夏。


振り向いた瞬間、私は全身を包まれた。


暖かくて、落ち着く、いい匂い。


昔から、知ってる匂い。


背中に、腕が回されて、強く強く抱きしめられる。


「…っ洸!!!」


涙が、溢れて止まらない。


声よりも先に嗚咽が出て、それでも必死に洸にしがみつく。


「っ…聞いて、ほしいの」


「うん、葵、聞くよ」


洸の声は、優しいだけじゃなくて必死だった。

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