忘れられない君との夏。
それが嬉しくて、涙が止まらなくなる。
「私、笑顔でいってらっしゃいって言えない」
「…うん」
「東京は大切な人を奪う。だから今も嫌い。きっと、これからもずっと嫌い。洸のそばにいたい。行って欲しくない。」
「…うん」
「洸が変わるのがこわい。帰ってこないかもしれないのがこわい。…洸に、忘れられるのがのこわい」
胸の中にある複雑な気持ちを、全部吐き出す。
「でも、私は…」
「葵!」
体が解放されて、頬を大きな手に包まれる。
溢れ続ける涙が、洸の手を伝う。
「俺は、葵が東京行くなっていうなら行かない。東京は、俺の夢だ。でも、それと同じくらい、ずっと葵が好きなんだ」
「こ…う」
「昔から、ずっと、葵は俺の憧れで、俺の大好きな子だ」
胸が、キューッと締め付けられる。
洸の手を上から包み込む。
「葵は、どうしてほしい?」
洸は、私のそばにいてくれる。
夢と同じくらい、私が大切だと言ってくれた。
だから、私は
「洸に、東京にいってほしい」