目を閉じたら、別れてください。
『ごちそうになりまーす』
返信しつつ、私の心はひどく冷静だった。
甘酸っぱく心をかき乱されたわけでもない。
相手を思うと切なくて切なくて、会いたくなるわけでもない。
これは本当に恋なのか。
それともお見合い結婚の延長線。
続きなのかな。
泰城ちゃんみたいに彼氏の話をしていて心がときめくわけでもないし。
どうしたいのか自分でもわかっていない気がする。
このまま結婚して、進歩さんと同じ家に帰って一緒に寝て、たまにテレビや街角で元カノさんを見かけても気づかないふりをして、子どもとか生んで?
なんだろう。寂しい。
面白くない少女漫画を、最後まで読まないと気持ちが悪いから仕方なく読んでいるような気がする。
「あ、先輩、彼氏から電話です。先に行っててください」
待ち合わせの駅で降りたとたん、泰城ちゃんが携帯を耳に当てて走っていく。
トイレに向かう彼女から『えー、女の子とだよー』と甘い声が聞こえてきて、少しうらやましく思えた。
駅の改札口をくぐり、喫煙所を探すと案の定二人が煙草を吸って談笑していた。
私服姿も隙が無い二人に、面白くない感情が浮かんでしまう。
ばれないよう、後ろからこっそり近づくと、ある言葉が聞こえて足が止まった。
「結婚なんて、そんなもんでしょ? 何も利益がないのにするはずないじゃん」