目を閉じたら、別れてください。
予約していた店は、近くのホテルの三階のイタリア料理『フィオーレ』
サラダとデザートはバイキング方式で、ピザかパスタとスープを注文するラフな形式の店だった。
窓辺にサラダやデザートが並べられたテーブルが置かれ、選ぶときに景色が見れる。
それにピアニストの生の演奏を聴きながら、優雅にワインを揺らして楽しめる。

叔父さんはジムで疲れたのかサラダばかり食べていて少し無口だった。


「専務うぅ、私も次は行きたいです」
「泰城ちゃん……っ」

「ええー。私も今日は招待されて行っただけだよ。彼とは同級生でね。一人じゃ悪いかなって、そこの御曹司を誘っただけのこと」
「あそこ、会費高いし。近くのジムの方がいいよ」

二人に説得されている泰城ちゃんを見ると、本当に通いたいっていうより二人に説得されているのがうれしそうに伺える。
私なら、わざわざ休日まで体動かしたくない。一日中眠っていたいもん。

「それより二人でエステ行けばいいじゃん。最近支店がここら辺にできた、オーガニックサロンの『エマ』さ、あそこなら顔効くかも」
「きゃあ。知ってます! 予約とるのも大変な高級エステ!」
ジムの時よりも目が輝く泰城ちゃんに、苦笑する。
高級店って言ってるのに、そこまで行きたいのか。

「何他人事みたいな顔してんだよ。お前が行くんだっての」
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