目を閉じたら、別れてください。
「……なんかやだ」
すっかり酔った泰城ちゃんは、彼氏が迎えに来てくれた。
ハーフかなって思うほど顔立ちの整った、好青年。
何度も私たちに頭を下げて、車に乗せていく。
もしかしたら泰城ちゃんより年下なのかもしれない。
二人を見送ったあと、振っていた手を下すと、夢からさめたような気がした。
叔父さんは反対方向なので電車に乗ってさっさと帰ってしまい、私の隣には彼がいる。
「なにが?」
「周りがどんどん口を出してくるのが、やだ」
「そりゃあ、一回駄目だったからじゃねえのか」
来ないタクシーを待つ。私は明日も仕事だからか、彼は呼び止めなかった。
帰ったら、私におやすみってメールをくれるのだろうか。
私に会っていないときの進歩さんは、全く想像できない。
「でもいやだ。周りにせかされるのも詮索されるのも、いやだ」
「じゃあ、進めていいんだな?」
一歩近づいた彼が手を握ってくる。
その手を私も強く握り返す。
「……進歩さんも、叔父さんに急かされたりしてないの? 何も言われてないの?」
さっきの喫煙所での二人を思い出す。
あの時に言われたこと、私に言えるの。
なのに、彼は笑ってごまかした。
「うん。言われてねえ。あの人は今回は仲人じゃねえからかな」
嘘。
嘘つき。
大ウソつき野郎。
私は、あんたが叔父さんに言った言葉をきっと忘れない。