目を閉じたら、別れてください。

「……なんかやだ」

すっかり酔った泰城ちゃんは、彼氏が迎えに来てくれた。
ハーフかなって思うほど顔立ちの整った、好青年。
何度も私たちに頭を下げて、車に乗せていく。

もしかしたら泰城ちゃんより年下なのかもしれない。

二人を見送ったあと、振っていた手を下すと、夢からさめたような気がした。
叔父さんは反対方向なので電車に乗ってさっさと帰ってしまい、私の隣には彼がいる。

「なにが?」
「周りがどんどん口を出してくるのが、やだ」
「そりゃあ、一回駄目だったからじゃねえのか」

来ないタクシーを待つ。私は明日も仕事だからか、彼は呼び止めなかった。

帰ったら、私におやすみってメールをくれるのだろうか。
私に会っていないときの進歩さんは、全く想像できない。
「でもいやだ。周りにせかされるのも詮索されるのも、いやだ」

「じゃあ、進めていいんだな?」
一歩近づいた彼が手を握ってくる。
その手を私も強く握り返す。

「……進歩さんも、叔父さんに急かされたりしてないの? 何も言われてないの?」

さっきの喫煙所での二人を思い出す。
あの時に言われたこと、私に言えるの。
なのに、彼は笑ってごまかした。

「うん。言われてねえ。あの人は今回は仲人じゃねえからかな」

嘘。
嘘つき。
大ウソつき野郎。
私は、あんたが叔父さんに言った言葉をきっと忘れない。
< 114 / 208 >

この作品をシェア

pagetop