目を閉じたら、別れてください。
結局、そのまま彼の何もない部屋になだれ込んでしまった。

忙しいって言うのは本当らしくて、段ボールが並ぶ壁際と、薄いカーテンしかつけられていない窓。カウンターキッチンには、飲んだワインの瓶が並べられてる。

冷蔵庫にはおつまみ用のハムとかチーズとか、水しかなくて驚いた。
この人、外食オンリーなんだ。
私が豚汁とか作ったら食べてくれるのだろうか。

なんて服を脱ぎながら、ちらちら考えてしまった。


けれど彼に触れられるとまるで処方箋のように、咳は収まった。

エッチが下手なんて嘘をいってごめんね。

今は優しく触れてくれる、奥に届くその指が好き。
包み込むように大きな手で触られると嬉しい。

あとキス。癖になってしまいそうになる。意地悪に逃げる舌も好きだけど、チュッと吸い付いてくるキスが好き。


ごめんね。―-私、進歩さんが好きなんだよ。

涙がこぼれたら、目じりを撫でられた。
覆いかぶさる彼から見下ろされると、囚われて逃げられない錯覚が起きて、興奮するのが分かる。

きっと次は逃がしてくれないんだろうな。
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